前回のコラムでは、協働ロボットが「安全柵なしで人と一緒に働けるロボット」であることを解説しました。その柔軟性から「魔法のツール」のように思われがちですが、実は協働ロボットには明確な「得意・不得意」が存在します。

導入後に「思ったより生産性が上がらない」「結局、人がやったほうが早い」といった事態を避けるためには、ロボットの特性を正しく理解し、適切な工程を見極めることが不可欠です。

目次

狭い場所や頻繁なライン変更もOK!コボットが向いている現場の条件

協働ロボットが真価を発揮するのは、その「柔軟性」と「安全性」が活きる現場です。具体的には、以下のような特徴を持つ工程が向いています。

① 単純かつ繰り返しの多い作業

人間にとって苦痛や集中力の低下を招く「単純な繰り返し作業」は、ロボットの最も得意とする分野です。

  • 事例: 部品のピック&プレース、箱詰め、ラベル貼り、検査機へのワークの投入・取り出し(マシンテンディング)など。 ロボットは24時間、疲れることなく一定の精度で作業を続けることができます。

② 人のすぐ隣で行う「半自動化」工程

全自動化するほどではないが、一部の作業を自動化したい場合に最適です。

  • 事例: 人が部品を組み立て、その横でロボットがネジ締めや接着剤の塗布を行う。 人が付加価値の高い「判断」や「微調整」を行い、ロボットが「力仕事」や「定型作業」を担うことで、作業者一人当たりの生産性を最大化できます。

③ 頻繁にレイアウト変更が発生する現場

従来の産業用ロボットは一度設置すると移動が困難ですが、協働ロボットは比較的軽量で、キャスター付き架台などで容易に移動可能です。

  • 事例: 多品種少量生産の現場において、午前中はAラインのパレタイジング、午後はBラインのマシンテンディングといった運用。 「必要な時に、必要な場所に移動して使う」という、ツール(道具)のような使い方ができるのが強みです。

「万能」ではないリアル。協働ロボットが苦手とする作業

一方で、何でも自動化しようとすると失敗の原因になります。以下の条件に当てはまる工程は、協働ロボットには不向き、あるいは従来の産業用ロボットの方が適している場合があります。

① 極めて短いサイクルタイム(タクト)が求められる工程

協働ロボットは、人と接触した際の安全を確保するため、最高速度に制限がかかります。

  • 課題: 1秒間に数個の部品をさばくような超高速ラインでは、安全速度で動作する協働ロボットでは生産スピードが追いつきません。

② 重量物の搬送

協働ロボットの可搬重量(ペイロード)は、一般的に3kg〜20kg程度が主流でした。最近では、協働ロボットの得意領域の一つと言えるパレタイジングのニーズに対応するべく30kg以上の可搬重量のモデルも増えてきています。

  • 課題: 50kgを超えるような重いワークや、巨大な建材などの搬送には、パワー不足です。無理に導入しようとすると、ロボットの故障や寿命を縮める原因となります。

③ ミクロン単位の超高精度な位置決め

協働ロボットは、人との衝突を検知するために各関節がしなやかに動く設計になっています。

  • 課題: 産業用ロボットに比べると剛性(硬さ)が低いため、重い負荷がかかった際や、ミクロン単位の精密な位置決め、または激しい振動を伴う研磨作業などでは精度が安定しないことがあります。

ツールからパートナーへ。現場が活きる「アシストオートメーション」の考え方

協働ロボット導入の最大のメリットは、単純な「人の置き換え」ではなく、「人とロボットのベストミックス」にあります。軽薄短小ワークで立ち作業手組みラインの多い亀岡電子では、これを「アシストオートメーション」と命名して「世界一止まらないライン」の構築に役立てています。

  • ロボットの役割: 定型作業、単純反復、重い物の保持、一定時間の計測、有害な環境(粉塵・高温など)での作業。
  • 人間の役割: 非定型な作業(バラ積み部品の取り出しなど)、最終的な外観品質の判断、工程の異常検知、ロボットへのティーチング。

例えば、ネジ締め工程において「ネジの供給と仮締め」をロボットが行い、「最終的なトルク確認と周辺の傷チェック」を人が行うといった分担です。このように、ロボットに「全部」をやらせようとせず、「ロボットを人のアシスタントにする」という発想が導入成功の近道です。

「作業スピード(タクト)」とどう折り合いをつける?現場の運用ノウハウ

導入検討時に必ず直面するのが「タクトタイム」の問題です。

速度制限という壁

協働ロボットは「安全」を最優先するため、人が近づいた際や接触の可能性があるエリアでは、動作速度を落とさなければなりません。これは、生産能力が低下することを意味します。

解決策としてのシステム設計

タクトを落とさずに自動化を実現するためには、以下のような工夫が必要です。

  • エリア監視: レーザースキャナ等を使い、人が遠くにいる時は高速、近づいたら減速・停止する設定にする。
  • 並列処理: 1台で間に合わないタクトを、2台のロボットで分担する。
  • 夜間稼働: 日中のタクトは遅くても、夜間に無人で稼働し続けることで、トータルの生産量を確保する。

SIer選びで妥協しない!現場を理解してくれる依頼先の見極め方

自社だけで「向いている工程」を完璧に判断するのは困難です。ここで重要になるのが、システム構築を担うシステムインテグレーター(SIer)の存在です。

良いSIerを見極めるポイントは以下の5点です。

  1. 自発的に考えてくれるか: どんな工程でもユーザ側の構想ありきではなく、技術的な難点やコスト対効果などを考慮して、ロボットありきではなく、向かない工程には正直に代替案を提示してくれるか。
  2. 安全規格(ISO/TS 15066等)の知識: 協働ロボット特有の安全ルールを熟知しており、適切なリスクアセスメント(危険源の特定・分析・評価)と安全方策に基づいたシステムを具現化できるか。
  3. 周辺機器を含めた提案: ロボット本体の動作プログラムだけでなく、ハンド、ビジョンセンサー、架台まで含めた「システム全体」の最適化を提案できるか。
  4. 前後を含めた提案: これまで人手で行ってきた作業をロボットに置き換えると、その前後の工程も連動した変更が必要になるものです。わざわざロボットに置き換えるために、ロボットに人手で部材を供給し続ける必要が発生するなどで、手待ちの多い作業者が相変わらず削減できないといった場合も考えられます。こうした前後の工程も勘案したシステムの提案をできるかどうか、すなわち「モノづくりを理解しているかどうか」にシステムインテグレーターの真骨頂があると亀岡電子では考えています。
  5. メカ・電気の連携: メカ機構と電気制御両方のスキルを有しているか。どちらか一方に偏っている場合連携、連動した対応が十分可能か。亀岡電子ではこの点を重要視しており、メカ・電気・ソフトの一貫対応体制を敷いています。

「人の代わり」ではなく「新たな分担」を。協働ロボットを活かす第一歩

協働ロボット導入を成功させる第一歩は、「現在の作業をそのままロボットにやらせようとしないこと」です。

向いている工程を選び、人との役割分担を再定義し、速度制限(タクト)を考慮したシステムを構築する。このプロセスを経て初めて、協働ロボットは現場の強力な武器となります。

次回は、導入の強力なパートナーとなる「SIer(システムインテグレーター)」が具体的に何をする会社なのか、その役割について深掘りしていきます。

 

(文・亀岡電子コラム編集部)